谷口忠大『記号創発ロボティクス』

曇。
音楽を聴く。■バッハ:ハープシコード協奏曲第一番BWV1052(ルセ、ホグウッド)。ルセにしてはちょっとよくわからない。もちろん一定水準はクリア。

バッハ:ハープシコード協奏曲2

バッハ:ハープシコード協奏曲2

ブラームス交響曲第三番op.90(カラヤン1964)。

谷口忠大『記号創発ロボティクス』読了。「ロボットは心を持てるか」というよくある命題から始まるが、あまりそれに拘る必要はない。第二章「自ら概念を獲得するロボット」というのは、センサー群による複数の閉じた入力(マルチモーダルな情報)から、クラスタリング(一種の計算)によってロボットが「概念」を創造するということを解説していて、とても刺激的かつ興奮させられる。敢て場違いな言い方をすれば、コンピュータに「イデア」が作れるということになるのではないかと思った。ほぼ「無」から、カテゴリーを作り上げることを可能にしている。視覚や聴覚、触覚などの情報を使ってですよ。これはおもしろい。
 第三章「自ら言葉を学ぶ知能」は、ある意味第二章の延長線上にあって、予備知識なしに言語分析を可能にするシステムを扱っている。例えば、「不思議の国のアリス」の原文から単語の区切りの空白を抜いたものを与えて、分節化をほぼ可能にしている。これもすごい。これは、第四章「潜んでいる二重分節構造」につながり、言語の二重分節構造が、視覚などにも応用できるのではないかというもので、最初はミスリードかとも思われたが、一定の成果を収めているのには驚かされる。
 第五章「ロボットは共感して対話する」というので、人間の曖昧さをロボットが察知するだけでなく、ロボットに曖昧に指示させて、それを人間が類推する、なんてことをやっているのもおもしろい。第六章「構成論的アプローチ」と第七章「記号創発システム論」は一種の弁明で、この著者らが研究している分野は、他からよほど「科学ではない」と云われているらしく、それらに対する弁明・反論になっている。まあなくてもよい部分かも知れないが、こうした科学論は自分は嫌いではない。まあ、本当に研究自体がおもしろいんだから、いいのではないの?
 しかし、知らないことばかりで、勉強になったし、なにしろ刺激的だった。実際のモデル理論などもわかるともっと面白いのだろうが、まあそこまでできれば研究者になってしまうから、自分にはむずかしいだろうな。いや、こういうぶっ飛んだのが出てきて、若いのにすごいです。若い研究者ばんざい!
記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ)

記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ)


イオンの写真屋。カルコス。
早寝。