川崎修『ハンナ・アレント』

雨。のち晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十七番K.595(ブレンデル、マリナー)。まあいいのだが、ブレンデルはこの曲はもっと無意識で演奏して欲しいように感じる。計らうとダメ。■シューベルト:ピアノ・ソナタ第二十番D.959(ブレンデル参照)。これはさすがの演奏。美しい。シューベルトは、四十分があっという間だな。

川崎修『ハンナ・アレント』読了。アーレントの思想に分け入った労作。本書を読んでも、アーレントのわかりにくさは筋金入りだという印象はかわらない。すっきり一言では腑分けできないのだ。漠然とした物言いになるが、アーレントは西洋の知識人の複雑さの典型だと感じられる。プラトンアリストテレス以来、数千年の思想の伝統を背負っているという、そんな感じである。我々からしてみれば、常に「思想」として帰っていく場所があるのは、羨ましいと思わないでもない。もちろん我々にも帰っていく場所がないわけではないが、それは出来上がった「思想」ではないし、またそのような「還元的思考」が必ずしもいいわけでもないだろう。ただ、日本の新しい世代は、東洋ではなく、西洋の過去に根拠を求めていくようになってきているとも思う。いや、これはアーレントとは関係がないことだった。さても、本書は大変に勉強になりました。こういう骨太の本が文庫化されるというのは、不思議な感じがする。

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)