マンジット・クマール『量子革命』

日曜日。晴。風が冷たい。
音楽を聴く。■モーツァルト:フルート協奏曲第一番ト長調K.313、フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調K.315(ランパル)。

Flute & Harp Concerti

Flute & Harp Concerti

ベートーヴェン弦楽四重奏曲第六番変ロ長調op.18-6(エマーソンSQ)。■バッハ:ピアノ協奏曲第三番ニ長調BWV1054(リヒテル1983Live)。

図書館。
図書館から借りてきた、マンジット・クマール『量子革命』読了。青木薫訳。これまで量子力学に関する類書はさんざん読んできたため、県図書館で本書を見つけても、借りることをちょっと躊躇した。一読してみて、確かに大まかな事実は、本書で新しく知ったことは殆どなかったが、読んでみてよかったと思う。科学史的な事実や、人物の書き分けなどが、類書と比べて格段にピントがシャープになった感じである。自分の素人判断ではあるが、実際に物理学で(哲学でも!)学位を取っている、著者の物理理解は相当なもので、複雑なところでもレヴェルをあまり落とさずわかりやすく説明する力には、驚かされた。また翻訳も、いつもどおり青木薫さんの翻訳は見事で、これも本書の価値を高めている。ことさら文学的な表現が使ってあるわけではないけれども、著者は筆力があり、アインシュタインやボーアの死などには、こちらもついしんみりとしてしまったくらいだ。
 本書は特に、ハイゼンベルクの登場あたりから俄然おもしろくなる。読んでいてつらつら思ったのだが、現在ですら、量子力学の教科書は、書き手の理解する量子力学が書いてあるだけなのである。自分などのように勝手なやり方で量子力学の教科書を読んでいると、それぞれの本の記述の対応が何か奇妙な感じがしていたのだが、完全に正統的な量子力学の教科書などないのだ。(これは古典力学ではあり得ないことである。)さらに、量子力学から発展した「場の量子論」は、これまた同じではない。自分の望みは、場の量子論でこのような一般啓蒙書が出て欲しいのだが、場の量子論は数学的に難解で、かつ複雑な「建て増し」が繰り返されているので、量子力学ほどには数式の意味を、数式を使わずに解説することはむずかしい。本書には場の量子論の記述は一切ないが、それを扱った続編を期待したいものである。
 とにかく、本書には物理への刺激を受けましたよ。このところ数学がおもしろく感じられるのだが、本書を読んで、つい量子力学の入門書をまたポチってしまいました(笑)。量子力学も自分なりのメモを作りたいのだが、上記の理由もあって、たかがメモなのに、どういうアプローチをしたらいいのか、なかなか見えてこないのである。まあ、趣味なのだからいいけれど。
量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突

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