有限群から対称群への準同型写像(群の表現)

位数 n の有限群Gから、n 次の対称群 への準同型写像 が存在する。この準同型写像 は、Gの左からの働き によって引き起こされる。同様に、G自身の上への、右側からの働き や、両側からの働き によっても、Gから への準同型写像が得られる。かかる準同型写像を、Gから への「表現」などという。準同型写像が一対一(単射)なら、それは「忠実な表現」であると言われる。
どういうことか、群Gの左からの働きを使って説明しよう。有限群Gの位数を n とし、Gの元を適当に並べて
   
とする。これらに群Gを左から働かせると、g∈Gの働きで、(1)は
   
へと変わる。ところが、
   
より、(2)は(1)を並べ替えたものに過ぎない。すなわち、g によって或る置換が引き起こされるということは、g から或る置換への対応 があることを示している。そして、置換は群(n 次の対称群)を作るので、その対称群の演算と、Gの元 g の演算を、写像 によって対応させることができる。すなわち
   
である。これが、上の準同型写像 なのである。
 なお、かかる準同型写像を「表現」と呼ぶのは、Gが任意の抽象的な有限群なのに対し、 は具体的なイメージのある、対称群であるからなのである。考えてみれば、これらが対応するのは、不思議な感じがしないでもない。


なお、Gの右からの働き を用いた準同型写像 を考えると、これもまったく同様である。そして、 は共に、Gから への一対一写像である。
 けれども、Gの両側からの働き からも準同型写像 が得られるが、これは必ずしも一対一写像ではない。実際、例えばGが可換群ならば、
   
となって、すべて恒等写像になってしまう。よって一対一写像ではない。
 つまり、 は忠実な表現を与えているが、 は表現を与えているものの、それは忠実でない。