岩村暢子『「親の顔が見てみたい!」調査』

晴。
イオンの写真屋。カルコス。
岩村暢子『「親の顔が見てみたい!」調査』読了。副題「家族を変えた昭和の生活史」。同じ中公文庫の『変わる家族、変わる食卓』(参照)に続く、岩村氏の著書を読んでみた。前著の調査対象は現代の食卓であったが、それを作った現代の母親たちの、そのまた母親たちを調査した本である。だいたい、敗戦時に子供だった世代で、その頃は当然ながら碌なものを食べていなかった。レシピを元にした料理など、考えられなかった子供時代だったわけである。そこで敗戦を機に世界が一気に変わり、料理に関する考え方も劇的に変転してきた。個人的なことを云うと、ちょうど自分の母親(か、あるいはもう少し上)の世代のことで、本書の記述は自分にもいちいち思い当たることが多かった。細かくは書かないが、自分の母親たちの世代も、じつは料理の伝統など継承されていないのである。だいたい、かつての料理など、普通は焼くか煮るしかなかったのであり、味付けなどもきわめて大雑把なものだった。そこに、レシピを参考に料理をつくるという「革命」が起きたのである。だから、繰り返すが、そこには継承すべき伝統などなかった。
 その他、「子供の『個性』が大事」「できるだけ子供の言うとおりにさせる」「子供に負担はかけさせたくない」「皆の家庭がそうなら、それでいいのでは」という教育観。その通りで、唸ってしまう。自分たちは、こうして育ってきた子供だったのだ。その挙句(食卓も含め)どうなったかは、あまり言いたくもない。
 本書は掛け値なしに一次資料を使って書かれたもので、日本人の変貌を炙りだした貴重な研究だと思う。これは、様々な分野と連携可能であろう。意外にも気付かれなかった視点からの考察になっている。詳しく書いていると切りがないので、是非本書自体に当たられたい。