小坂国継『西田哲学の基層』/志賀浩二『数学という学問1』

晴。
昼過ぎ、地震。震度3くらいだった。震源岐阜県東部で、大きさはM5ほど。
いい天気なので、少しぶらぶら歩く。


小坂国継『西田哲学の基層』読了。読んでいて西田哲学の「深さ」がしきりと思われた。優劣をつけるわけではないが、例えばウィトゲンシュタインの「表層的」哲学との、何という違いであろう。それにしても、これが文庫で出るなら、西田自身の論文の網羅的なアンソロジーが、文庫で出てもいいのではないか。岩波文庫の三巻本、それも常には入手可能でないのしかないとは、情けない話である。

西田哲学の基層――宗教的自覚の論理 (岩波現代文庫)

西田哲学の基層――宗教的自覚の論理 (岩波現代文庫)

志賀浩二『数学という学問1』読了。文庫書き下ろし。名著。自然数から始まり、実数、極限と連続性、連続関数、対数、ニュートンライプニッツオイラー、コーシーと、論理的な順序で解析学を中心に数学を解説していく。流れがじつに自然だ。歴史的な話もしてあるが、必ずしも歴史的順序に従っているわけではなく(例えば、εδ論法が始めの方に出てくる)、論理の展開を重視してある。この構成が洵に美しい。予備知識は高校数学で充分だろう。素人が読むことも考えられており、内容は高度なところもあるが、余分なことに頭をつかわせない、著者らしい親切な書き方がしてある。独創的な記述も少なくなくて、たとえば、例の「アキレスは亀に追いつけない」という「ゼノンのパラドックス」の本質は、実数の連続性(デデキントの切断)にある(p.75)など、初めて聞くが説得的な話もある。聞けば全三巻らしい。続巻が待たれて仕様がない。
数学という学問〈1〉概念を探る (ちくま学芸文庫)

数学という学問〈1〉概念を探る (ちくま学芸文庫)

ところで、この本に紹介されている、オイラーの発見した不思議な式がある。
   
この右辺の無限積の分子には(2以外の)すべての素数があらわれ、分母は分子と1だけちがう、ある奇数の二倍になっている。どうして素数が、こんな形で結びついているのであろうか。また、どうしてオイラーは、こんな等式に気がついたのだろう。永遠の謎でもあろうか。
※追記 上のオイラーの式について、ophthalmos さんが解説を書いて下さいました(こちら)。ありがとうございます。