河合隼雄『中年クライシス』

河合隼雄『中年クライシス』(isbn:4022641134)読了。
ユングはこのような人々に会い、また自分自身の体験をも踏まえ、中年において、人間は大切な人生の転換点を経験すると考えるようになった。彼は人生を前半と後半に分け、人生の前半が自我を確立し、社会的な地位を得て、結婚して子どもを育てるなどの課題を成し遂げるための時期とするならば、そのような一般的な尺度によって自分を位置づけた後に、自分の本来的なものは何なのか、自分は『どこから来て、どこに行くのか』という根源的な問いに答えを見いだそうと努めることによって、来るべき『死』をどのように受けいれるのか、という課題に取り組むべきである、と考えたのである。太陽が上昇から下降に向かうように、中年には転回点があるが、前述したような課題に取り組む姿勢をもつことにより、下降することによって上昇するという逆説を経験できる。しかし、そのような大きい転回を経験するためには、相当な危機を経なければならない、というわけである。」